第48期 2005年4月号 |
茅ヶ崎方式英語会 本 校 会 報 |
三菱化成鰍定年退職し今年65歳の松井さんは、昨年9月からカナダに滞在しています。
報酬ゼロのGuest teacherとして、中高生に日本文化を紹介するためです。現地でのご活躍を紹介します。
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カナダでの教育ボランティア活動
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(2005年1月〜3月)
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C2 会員 松井和弘 |
NECHAKO中学の公式任務終了と転居 |
Vanderhoofへ来てちょうど半年となった。3月24日で学校の公式日程を全て終了した。一日一日が期待と不安と発見の毎日であったが とにかく一応任務を終えてほっとしている。
43年間の会社生活では毎日階段を登り続け、下ることがなかった。役職に就くとともに部下が増え、秘書に支えられて毎日を過ごしていた。恥ずかしながらバスの乗り方から、郵便物の出し方に至るまで無知に近くなっていた。そんな私がカナダでは24時間全て自分で対処しなければならなくなった。授業科目の確認と準備、教室の場所、遠隔地小学校への往来するための交通確保、宿泊先、メールの確認と返信等、さらに食材の買い物から洗濯に至るまで英語だけで処置する必要があった。電話で確認するのも、つらい仕事であった。ヒアリング能力は進歩せず、始終かん違いが起こった。大ポカに至らずに済んだのは歳の功であろう。NVSS図書館のMrs.NicholsonとMrs.Reidは、いつも公私にわたりサポートしてくれた。本当にありがたかった。 振返ってみて初めて感じたことだが、着任当初は余り歓迎されていたとは思えない。年寄りが何しに来たのか、と多少の関心を持たれながらも殆ど無視に近かったように思う。活動範囲を小学校や非行歴学生専門の中学校、そしてカソリックのナイトスクールと広げていくうちに市民の反応が変わり、最後に着任校NVSSの教師の反応が変わったと感じている。学内の送別ティーパーティには40名以上の教職員が集まった。 任務終了と同時に、昨日Caron家を離れてNorila家に滞在することになった。主人のMr.Jormaは郵便局のマネージャー、奥さんのMrs.Claraは看護婦として老人介護施設で働いている。一男一女があり、長男PaulはCalgaryの大学院を間もなく卒業する。娘のAlisaは私の郷里・浜松で英語の教師をしている。当地に到着直後全くの偶然から知り合い、親しくなった。町の中心部でステイタスの高い所に住んでいる名士の一人である。既に58歳を過ぎており、60歳の定年以後どのように過ごすか思案の様子で、私の生き方に関心を寄せている。19歳でフィンランドからカナダへ移住したそうで、こよなく自転車を愛している。家にはDownstairsと呼ぶ半地下の部屋があり、トレーニング用の運動器具が完備されている。 あたかもスポーツクラブのようだ。 Mrs.Claraは週4日働いているが、今週はシフトで午後3時から11時迄の勤務である。カソリック信者で毎週日曜日は教会へ行く。主人はプロテスタントであるが典型的なオシドリ夫婦である。Mr.Jormaに、お互いの家庭に夫婦でホームステイすることを提案したところ賛同を得たので、4月24日からは家内・以津子と共に2週間お世話になる。その後はさらに別の家庭Embree家の世話になり5月15日まで滞在する。滞在中は家内にも先生や生徒達と交流の一端を担って貰うことにしている。帰国は6月2日の予定である。 |
シニアーのホームステイ |
カナダ生活も半年が過ぎた。この間、4家族で世話になった。帰国する6月初めまでには、5〜6家庭に滞在の予定である。衣食住だけでなく言葉もシステムも違う世界であれば、当然ストレスもたまる。しかし未だ見たことのない世界が見えると思えば何とか我慢できる。内側からの景色はまことに興味深い。
60歳を過ぎて夫婦だけの家がたくさんある。大きな家は不経済と売りに出ている家も多いそうだ。当地で親しくなったNorilaやEmbree夫妻は既に子供達が独立し二人だけの生活である。家は広く250uはある。いつでも一家族受入れ可能である。4月24日以降、4週間は彼等の家に寝泊りする。ゲスト扱いでなく自分で全てをするというのが了解事項である。お互いに家を開放し教育ボランティアや旅行をしようと話し合っている。これから毎年避暑に来てもよいか、と聞くと大歓迎だと言う。気温25‐30度、湿度55‐65%程度で快適に違いない。 ゴルフクラブは車で数分のところにある。年間650ドル(約6万円)払えばプレイは全くフリーで、飲食以外に金はかからない。30分走れば他にも2か所コースがある。道は広く平坦で運転は極めて容易である。片道100キロ程度は近距離感覚で遊びに行く。ハイウェイは殆ど全て無料である。 Car Homeというトレーラーを持っている家庭が多い。Mr.Embreeもその一人で、大型バンに連結して旅行に出掛けている。バス、トイレ、キッチンとベッド付で4人は寝泊りできる。アラスカやユーコンに1週間以上もかけて旅行したりしている。ホテルに泊ったとしても二人で1泊150ドルあれば充分で、時期によっては100ドル以内であろう。日本のシステムと違い部屋単位の料金設定で、一人でも二人でも殆ど変わらない。 食費は極めて安い。鮮魚以外、食材は何でもある。販売単位の大きなことが難点であるが、慣れれば何とかなりそうだ。二人で1日20ドルあれば充分だと思う。熱源は電気でバーベキュー用にプロパンを保持している。暖房は薪か木屑から作ったペレットで、薪ならば無料で貰える。 問題は健康管理と移動時の交通手段である。クリニックや歯科医はあるが、すこし複雑になると100キロ東のPrince Georgeへ行かねばならない。それに常に予約が必要となるので、滞在先のサポートが不可欠である。車は必需品で当地では夫婦各1台が普通である。レンタカーは割高で中古を買って乗っている人が多く、15−20年前の車は珍しくない。 |
シニアーの役割 |
春が来た。美しい春だ。未だ雪と氷に包まれていて野山が緑に変わるには後2か月かかるが陽射しは春だ。
昨年9月到着の直後に初雪をみて一気に冬入りした。1月半ばには夜間零下45度、日中零下30度が3日間続いた。長い冬だった。今朝は7時半に家を出て町の一角を歩いてみた。零下10度ながら明るい太陽と所々に現れ始めた土や木々に春の温もりを感じた。ボッチェリの世界だ。不思議と芸術的な思いを懐く昨今である。これも長かった極寒の冬が至らしめる効果だろうか。 2月16日発行の週刊紙OMINECA EXPRESSに私の記事が掲載された。写真入りの大きな記事で驚いている。タブロイド版28ページの地方新聞である。第1面の紹介欄に小さな写真が載り、第2面に大きな写真と記事が掲載されている。 |
現地の新聞での紹介 |
Passing on knowledge, tradition
"It's been great", said NVSS Vice Principal Brian Naka. We accepted him because we thought it would be great for the school, and the district actually. The kids have been enjoying the lessons and the sharing of his experiences. Althogh not trained as a teacher, Matsui has been spending time local schools sharing the knowledge of Japanese culture and business. Matsui is here on a strictly voluntary basis and has taught local youth a wide range of skills. "He's doing this to gain experience", said Naka. "He has lots to share in terms of life experiences and stories and cultures". 当地到着直後の授業(高校3年級)で質問が出た。Vanderhoof訪問の目的は何かというので "study and experience" と答えた。すると何を学ぶのかとたたみかけてきた。とっさに "co-existence with other peoples and nature" と答えると収まった。イギリス系対フランス系、カソリック対プロテスタント、インディアン対新入植者と根深い問題を感じるが、当地でもグローバル時代に遅まきながら対応を迫られ、私の訪問を一つのインパクトにしようと思う人々がいるのは確かである。 高齢化は当地でも大きな社会問題である。65才の年金生活者がボランティアの教師をするということが大きなインパクトのようだ。なぜ働くのかと教師の一人に尋ねられた。シニアーでなければ出来ない仕事があると答えた。シニアーには多くの経験が集積されている。悲惨な戦争とそして貧困、車もテレビもパソコンもなかった時代を生きてきた経験は貴重であり、次世代に伝えるのはシニアーにしか出来ない仕事である。学校でも教育、特に姿勢とか挨拶の重要性とか、物を大事に使うとか基本的なことをもっと厳しく教えるべきだと話すと、日本の現状はどうかときた。「日本がどうかというよりも、これは教育の基本だと思うがどうか」と投げ返すと引き下がった。 シニアーは家庭を解放し、お互いにホームステイしながら楽しい人生を切り拓こうと呼びかけている。いつ、どこで死んでもいい、常に前向きに積極的姿勢で後世代から敬愛されるライフスタイルを見つけようではないかと語りかけている。今の所、反応は上々だと思っている。 |
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